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2009.05.03

アーカイブズが広がる ―札幌市の公文書館構想―      鈴江英一

アーカイブズが広がる ―札幌市の公文書館構想―      鈴江英一
 〝アーカイブズ〟(archives)をどのように訳すか。これまでは文書館(もんじょかん・ぶんしょかん)・公文書館と訳してきた。ところが近年、日本語に訳さずアーカイブズとそのまま名乗るところが増えてきた。NHKアーカイブズなどは、ずいぶん知られるようになった。もっともなにやら古いものをしまっておく所のように理解されてもいる。ともあれいまや〝アーカイブズ〟が、文書館界を超えて普及し、市民権を得ているようだ。
 ただ、本来のアーカイブズは、古文書の収蔵施設というのではなく、官公庁、会社、団体、学校などの組織が自らの記録を保存し、活動の軌跡を検証することが出来るようにする施設である。地方自治体で言えば、自治体行政の記録(紙に書かれた決裁文書とは限らない、自治体活動の痕跡はすべて)を所定の保存年限を越えても、行政の過程をふり返ることが出来るように体系的に選別し永久に保存する、それがアーカイブズ(記録)であり、保存する場所がアーカイブズ(施設)である。
 いま道内では、北海道立文書館に次いで、二館目のアーカイブズを札幌市が計画している。札幌市では二〇〇四年四月に公文書館設置に向けて、「歴史的公文書等の保存・活用に関する基礎調査結果報告書」を公にしていたが、二〇〇八年十月から「札幌市公文書館基本構想検討委員会」(委員長大濱徹也国立公文書館特別参与、筑波大学名誉教授)を設け、すでに五回の検討委員会と三回の市民利用会議を重ねている。
 この検討委員会の議論は逐一、公開されているが、これまでの検討では、公文書を単に歴史的価値からではなく、(一)「効率的で公正かつ透明性の高い行政運営を確保する」目的で、また(二)「市民自治の推進」を図るための情報提供の役割を担うものとして、(三)市民が「「札幌」を知る」上で重要な資料として保存する、またそのための施設として公文書館の設置を構想している。
 構想案はこれからさらに練られる段階であり、構想が実現するまでには紆余曲折があることは免れないと思うが、これからは市民や議会の関心が計画を強固にする上で欠かせない。札幌市長が自らの口で、アーカイブズの意義と必要性を語ってほしいと願っている。
 目下、国会では福田内閣の置きみやげである「公文書管理法案」が審議されている。公文書を国民・市民のために保存するという、公文書保存と保存する公文書館の、いわば基本法である。地方自治体もこの法律に則るように規定されている。これに国立公文書館も重要な役割が予定されている。
 道も市町村も、市政を検証する記録に向き合うことが無ければ、どうして今日の困難、たとえば巨額の財政赤字で財政再建団体となった某市の事情を解明できようか。解明できなければ、未来に向かって確かなことは言えないはずである。地方自治体にとってアーカイブズの保存とそれを行うアーカイブズは、贅沢品ではない。自治体運営の必需品である。道内でもさらに第三のアーカイブズ構想を期待したい。先行の文書館・公文書館は、後続の範となり、モデルであってほしいと思う。 (札幌市公文書館基本構想検討委員会副委員長)

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